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Good Bye, Mr.Lawrence

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    しばらく前の話ですが、去年の12月に俳優のピーター・オトゥール氏
    亡くなりました。

    「アラビアのロレンス」という映画で主役のロレンスを演じた方で
    往年の映画ファンには知られているかと思いますが
    若い方はあまりご存じないかも知れないですね。

    この「アラビアのロレンス」は、「映画ベスト100」的な大きなアンケートを
    とったらベスト5くらいにはほぼ入ってくるような名作中の名作。

    アカデミー賞も、作品賞・監督賞・撮影賞・編集賞・美術賞・作曲賞と
    ほぼ独占しました。

    ただ、歴史物で政治や戦争の話がややヘビーなこと、
    上映時間が膨大(もともとは207分の大作でした)なこと、
    DVDで見たのでは全く良さがわからず、大画面なら大画面ほど
    素晴らしさがわかる、
    というタイプの映画なので
    だんだん知っている人は減っていってしまうのかな〜と思うと残念です。

    でも、前に池袋の名画座でリバイバル上映があると知ったとき行ったのですが
    満員でした。ときどきやってくれると良いなと思います。

    実はこの映画と、このピーター・オトゥール氏には
    自分はとても思い入れがあるのです。

    20歳でオーストラリアに行ったとき、
    現地のとんでもなく大きいスクリーンでたまたまこの映画を見て
    すごい衝撃を受けました。

    映画の大半は砂漠が舞台で、おそらく今まで撮影された映画の中で
    もっとも砂漠が美しく撮られた映画かと思います。

    砂漠の雄大さ、美しさ、
    「これぞ映画!」というようなスケールの大きさ、
    それからピーター・オトゥール氏のびっくりするような青い目に一目惚れしてしまいました。

    それがもとで、数年後にロンドンの映画学校に留学したりしたワケです。

    ロンドンで色々な国の友人たちが出来、ときどき
    「どうしてロンドンの映画学校に来たの? 日本にも、アメリカとか他の国にも
     映画学校はあるでしょ?」
    と質問されました。

    そのときいつも、「アラビアのロレンス」とピーター・オトゥール氏に憧れて、という
    話をしていたのです。

    あるとき、友人の一人が
    「私の友人がハムステッドでイタリア料理の店をやってるんだけど
     Mr.オトゥール、毎週土曜日の夜は必ずそこに食事に来るよ」
    というのです。

    それは是非、お会いしたい! そこに行ってみたい! というと
    友人は
    「でも、もうおじいちゃんだよ? まだ結構小さい息子さんと、家政婦さんと
     いつも3人で来て、静かに食事して帰るんだって」
    と言いましたが、
    モチロン、行きました。
    土曜日の夜に、この写真の大判の本を持って。

    サインをしてもらおうかな、何か一言「ファンです」とか言おうかな、と
    思ってドキドキしながら店のテーブルで待っていたら
    本当にいらっしゃいました。

    小学2〜3年生くらいに見える男の子と、あったかいおばさん、という感じの
    家政婦さんらしい女性と、長身で細身のオトゥール氏が
    静かにテーブルで食事を始めました。

    確かに、お歳を召されていて、病気をされたためかやつれたような感じもありましたが
    やはり姿勢が良く、たたずまいに品があり素敵な方でした。

    友人や、お店のマスターが
    「食事が終わったら話しかけても良いんじゃない? ほら、サインもらっておいでよ!」と
    横で言ってくれているのに、そのときの私はどうしても話かけられませんでした。

    彼のフィルモグラフィーを見ると、役柄には
    「ヘンリー2世」「ティベリウス帝」「アウグストゥス」「プリアモス王」など
    身分の高い役が多いようです。
    それも、傲慢な権力者や強い王、というのではなく
    トロイが滅びたときの王様であったプリアモス王のように
    歴史の中で滅びの悲しさを表すような役。

    そのレストランで静かに食事をとるオトゥール氏にも
    「国が滅びたけれども一命を永らえ隠遁して暮らす王様」というような雰囲気が漂い、
    その雰囲気にズカズカと割って入りたくなかったのでした。

    3人は食事を終え、コーヒーやデザートも終え、静かに席を立っていきました。

    本当に、自分だけの小さな思い出ですが。
    訃報を聞いたときは、ちょっと悲しく、そして静かにご冥福をお祈りしました。

    ちょっとホメオパシーの話をすると、
    ピーター・オトゥール氏は断然「Syph(スフィライナム)」梅毒マヤズムの人で
    あったのではないかなあ、と思います。

    そして、実在の人物であった「アラビアのロレンス」も。

    Syphは、「滅ぶ」「破滅」などのキーワードなどがあり、
    ホメオパスとしてはクライアントさんをそこから遠ざけるのが仕事なのですが
    Syphには、「滅びの美しさ」「退廃的なデガダンス」という要素もあり、
    芸術・映画・魅力的な人物というのには
    そういう要素があったりするなあ、と
    改めて彼を思い出しつつ、考えていました。

    この映画を未見の方は、ぜひぜひ名画座でご覧ください。
    私もいる可能性大ですので、見かけたらお声をかけてくださいませ〜。



    posted by: philiaito | 映画 | 12:20 | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
    コメント
     
    2018/05/10 8:58 AM
    Posted by: >あきこさまへ
    あきこさま
    こんにちは。
    だいぶ前に書いて自分でも忘れかけていた記事を見つけて読んでくださり、コメントを書いてくださってありがとうございました!
    とても嬉しいです。

    ときどき、ふと氏のことを思いだすとやはりあの澄んでいるけど深みのある青い目が思い出されますよね。
    2018/05/02 5:37 PM
    Posted by: あきこ
    ピーター・オトゥールファンです。

    彼に会いにイギリスまで行かれたとはビックリしました。
    会えてよかったですね。
    うらやましいです。
    素敵なお話、ありがとうございました。









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